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OpenSourceGuide
2006/11/30-2007/9/30

IT業界地図を変えるオープンソース動向(1)


オープンソースの弱点が払拭される年

日本にオープンソースが上陸してから8年が経ち、当初から課題とされていた問題点がようやく払拭される方向に進みそうです。 オープンソースとは、もともと最終的に利用者が使用する「システム」の部品であり、そもそもオープンソース・ソフトウェアと最終利用系である非オープンソース・ソフトウェアを比較することは、まるでシチューとその材料のニンジンを比べるようなことであり、ナンセンスだと思っています。 今までは、その食材であるニンジンがどういう品質かよく分からない為、またその品質もあまり良くないという認識があり、なかなか高級料理の食材に活用されませんでした。 日本上陸9年目を迎えた今年、オープンソース・ソフトウェアという食材の品質向上及びその調理方法などがそろい、2年後3年後には高級フルコースの食材として認識されるきっかけが起こりそうです。 今回は、これから1年以内に起こりうるオープンソース市場のキー・ファクターについて述べたいと思います。オープンソース・ソフトウェア及びIT業界の変遷に興味がある方は是非読み進めてみてください。後半では欧米の動きについても触れていきたいと思います。

オープンソースの普及を妨げる要因

まずは現状確認として、オープンソース普及のための阻害要因をまとめてみたいと思います。 Linux白書などのアンケート調査を見てみると、6割強のユーザー企業がオープンソース・ソフトウェアの活用障壁として人材不足を挙げています。しかしながら、人材不足の問題は市場性やソリューションの訴求力が上がれば、必ず市場の原理で問題が払拭されると思います。よって、ここでは人材不足については深く掘り下げず、根本的な問題点についてのみ触れたいと思います。

1)オープンソース・ソフトウェアの動作保証が自己責任になっている

そもそも、ビジネスとはリスクヘッジを前提に運営されています。そのビジネスの世界において最終責任をシステムインテグレーターが負わなければいけない従来のオープンソースの仕組み自体そのものが普及の阻害要因になります。

2)業務系のソリューションなどのアプリケーションが少ない
以前から言われていますが、エッジ系のシステム(Webベースのシステム)のソリューションはLAMP/LAPP系のソリューションを中心に存在していましたが、一歩、業務系の分野に踏み込むと、オープンソース・ソフトウェアはそもそもソリューションが存在していない時代がありました。ソリューションがなければ、一からプログラミングで開発をしなければならず、そうなれば費用面、開発時間面、品質面でオープンソース・ソフトウェアになかなか軍配が上がらないのは当然の結果です。

3)ハイエンド系のシステムにはパフォーマンスに不安を感じる
特にDB系で顕在化している問題ではありますが、パフォーマンスや機能面でオープンソースDBは不足感がありました。1億円規模以上のシステム案件においては、OracleやDB/2などの採用が当たり前に進んでいました。お客様は最良の判断をする為、どうしても大規模案件は非オープンソースDBを採用することになります。 特に案件単価が1億円を超える大規模システムにおける従来の上記3大普及障壁が、今年起こりうる各事象により、払拭されると考えています。以下では、これらの普及阻害要因の払拭につながる動きについてまとめていきたいと思います。

オープンソースの動作・運用全般を保証するサービス

従来からオープンソースの訴訟費用を負担するようなサービスや個別のオープンソースのみを動作保証をするサービスはありました。例えば、Linuxのライセンス違反(サブマリン特許など)について訴訟があった場合、その訴訟を防御するサービスや、Linuxの動作自体を保証するサービスなどがそれに当たります。 これらのサービスはマーケッターとしては面白い試みではありましたが、最終利用者にとっては部分的であり、やはりシステム全体についての「安心感」が絶対的に必要でした。そんなこともあり、オープンソースが日本に上陸してから、利用者からは常に「トータル・サポート」、「システム全体の保証」を要望されていました。 そのようなご要望に応えるべく、別ページでもご紹介したスタックサービスが登場しました。日本でも昨年後半から今年年初にかけて、ワイズノット(国内最大のオープンソースカンパニー)、NEC、CEC、NRI、CTCがこの市場への参入に手をあげました。各社の提供するスタックサービスには若干の違いがありますが、基本的に複数のオープンソース・ソフトウェアにまたがった動作保証と統合的なサポート対応・メンテナンスが実施されています。 非オープンソース・ソフトウェアであっても、複数のソフトウェアの組み合わせ保証をおこなっていません。しかしながら、利用者にとってみれば、どのソフトウェアを使ってもシステム全体を保証してほしいのには変わりはありません。この複数組み合わせの保証を現状はシステムインテグレーターが負っている状況です。 つまり、このスタックサービスにより、システムインテグレーターは非オープンソース・ソフトウェア以上のレベルでのリスクヘッジを実現できることになります。 このように、システムインテグレーターのリスクヘッジに貢献できるスタックサービスですが、現状はどうしてもコスト高(年額30〜40万円以上/システムが相場です)に見えてしまっているようです。この部分がスタックサービスの普及阻害要因のようです。 今年はこのスタックサービスの低価格化と適用範囲の拡大が進みそうです。

スタックサービス各社の今後の展開

現在、業界最安値のワイズノットのOSTSが年額19万8千円〜に対して、追随する他のスタックサービス・プロバイダーはSpikeSourceなどの外資系がバックについてスタックサービスを運営しています。そのSpikeSourceのCEO キム・ポローゼも公言している通り、今後はオープンソースの各コミュティーと協業関係を築き上げ、低価格化を推進するようです。 主要メディアのキム・ポローゼのインタビュー記事を見ると、オープンソースの各コミュニティーからサポート情報を無料で入手する代わりに、テストデータや顧客からのフィードバックを無償で提供するギブ&テイクによる協業であるとのことです。各コミュニティーとビジネスサイドが密に提携するこの協業モデルはまさにオープンソースらしい協業モデルであり、大変期待できる動きであると思います。 また、ワイズノット以外のスタックサービス・プロバイダーはPHPなどの上位レイヤーに対してなかなかサービスを提供できていませんが、スタックサービスの業界全体がこの動きになれば、さらにスタックサービスの普及は促進し、ひいてはオープンソースの市場は飛躍的に拡大していくと考えています。今年の各社の報道発表には是非ご注目頂き、今後のオープンソース市場の動きを占ってみるのも面白いと思います。 今回はいささか長くなってしまいましたので、続きは「IT業界地図を変えるオープンソース動向(2)」で触れてみたいと思います。



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