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Column Index



「全社横断型の戦略部門」への転換がIT部門の未来を切り開く
企業の“DNA”に沿った事業戦略をITで具現化するという「大役」を果たすためには
2006/09/16 ComputerWorld 11月号 巻頭記事


ITの活用いかんによって、コア・コンピタンス事業の収益性も上がれば、新たなビジネス・モデルの創出も活発化する。その実現のために企業は、社内におけるIT部門の位置づけを「ITの運用部門」から「ITを核にした戦略部門」へと転換する必要がある。これにより、IT部門は、企業の“DNA”に基づく自社の事業戦略を深く理解し、それとITを巧みにつなぐことのできる強力な部門となる。本稿では、IT部門の現状分析を行った後、この部門が本来あるべき姿を示し、そこに向かうための具体的方策を提起したい。

Tadashi Yoshimasa
Corporate Officer, Wiseknot Inc.
President/CEO, OpenSourceFirm Inc,


システム開発の営業という仕事柄、筆者はこれまでたくさんのユーザー企業を訪問してきた。この経験から気づいたのは、「IT部門の雰囲気が、その企業全体の社風や雰囲気とかけ離れていることが多い」ということだ。「統制がとれている」「自由闊達である」「先見性があって市場をリードしている」「保守的で時流に立ち後れている」といった、外から見てとれる企業のイメージから連想するIT部門のイメージが、その“実像”と異なっている場合が意外にも多いのである。

 最初に申し上げると筆者は、「IT部門の価値というのは、最新のシステムやアプリケーションを導入し続けていれば維持される」などとは思っていない。企業内におけるITの最適運営と、ITを活用した企業戦略の効果的実現がなされているかどうか。この2つを共に実践できることこそがIT部門の価値だと考えている。

 実際のところ、ITの最適運営(真に最適かどうかは別として)は、多くの企業のIT部門において行われているように思う。しかしながら、後者をクリアしているところは限られているというのが筆者の見解である。以下、企業内のIT部門の現状分析から始めて、この部門の本来あるべき姿や方向性まで掘り下げてみたい。

うまく機能していない組織の悪循環

 新規のプロジェクトを立ち上げる際、システムの構築に関して確固とした指針を持ち、ベンダーやSIerに明快に説明できる企業もあれば、構想段階から外部に丸投げしようとする企業もある。後者のようなスタンスの顧客に出会ったとき、筆者は、「初期段階から当社がかなり深く入り込むことになる。コンサルティングなどの売上げも期待できるな」などと喜ぶ反面、「最後まで、プロジェクトを成功させるために十分な投資をしてもらえるだろうか……」といった不安も同時に覚える。

 なぜなら、構想段階から丸投げをする企業の場合、往々にして企画力や部門間交渉力が欠如しているという傾向があるからだ。そうした企業はプロジェクトの長期化や、予算の確保体制など、不備が露呈する可能性が高い。プロジェクトが長引けば、システム仕様要求が変わってしまい、完成したシステムの寿命も短くなってしまうであろう。極端な場合はカットオーバー直後から陳腐化した、使い物にならないシステムと化してしまうこともある。また、予算が不十分な場合は、システム自体もそれなりの性能・機能にとどまり、顧客にとって中途半端なものとなるケースがほとんどだ。

 このような状況の下、しかも、企画力や部門交渉力に欠けているIT部門の場合、みずからの業務活動の成果を社内に示すことが難しくなる。ひいては、予算や優秀な人材を確保するための投資も縮小されるなどして、部門が弱体化に向かうおそれが出てくる。

危惧されるIT部門の弱体化

 IT部門の弱体化が進むとどうなるか。新規プロジェクトを立ち上げられなくなり、既存のシステムの強化もままならなくなる。そうなるとIT部門は、社内の基本的な情報システムの運用と従業員のクライアント環境のお守りが中心のコスト部門と見なされるようになり、自社にIT部門を持つことの意義すら問われるような状況に陥ることが想像できる。その際、経営者はこう考えるようになるだろう。「いっそのこと、IT部門自体をアウトソーシングしたほうが合理的かもしれない」

 筆者が気になるのは、こうした状況に陥ったときの大半の経営者の感覚である。もし、これがIT部門ではなく、自社のコア・コンピタンスを担う事業部門であった場合、どの経営者も、「これはわが社の存続にかかわる由々しき事態だ」ととらえ、直ちに改善策を打ち出すはずである。しかしながら、IT部門が窮地に立った場合には、怪訝そうな顔をしたり、苦言を呈したりはしても、改善に向けて大鉈を振るう経営者は非常に少ないのだ。

ビジネスとITを別枠で考える経営者

 これまで、ビジネスとITをうまく結び付けることで競合他社をリードし、業績を右肩上がりで向上させることに成功した企業を何度も見てきた。こう書くと、「そんなのは当たり前。だからこそ、当社では年間売上額の10%近い予算をITに振り向けているのだ」などといった反論が多く返ってくることだろう。

 しかしながら、ITが重要だと声高に叫ぶわりには、なぜか事業部門とIT部門を分けて考え、別枠で予算を組み、別個の基準で重要度を判断する経営者の何と多いことか。自社のコア・コンピタンスとなった事業部門でIT化が進み、依存しているにもかかわらず、なぜ、経営者はIT部門を別枠に押し込めてしまうのであろうか。

事業部門とIT部門が分断された理由

 自社IT部門の存在意義の低下が見られる企業には、ある共通の特徴が見てとれる。

 ある程度の歴史を有する企業は当然、ITが一般化する以前からコア・コンピタンスを確立したうえでビジネスを展開してきた。そうした企業では、ITは「新しい、特別なもの」といった認識で後から導入されている。それに伴い新設されたIT部門には、経営指針や社風といった企業の“DNA”とは無関係に、ITの専門知識を有するエンジニアやプログラマー、システム管理者が雇用されていった。こうした設立の経緯から、組織図上のIT部門は、総務部や人事部などと同じコスト部門という位置づけにあるところが多いのだ。

 ビジネスの変化のスピードとITの進化のスピードが今よりも遅かった時代、すなわちITの活用の方向性が企業内のみに向いていた時代には、IT部門はコスト部門の位置づけで何も問題はなかった。この時代、企業にとってのIT導入の理由と言えば、計算処理を行う際に発生していた人件費の抑制と、IT化によるスピード経営(実際には、計算処理速度の向上の意味合いが強かったが)であった。当時のIT部門では、計算センターとして経理や財務にまつわる大量の計算処理を行うという業務が中心であり、この手の業務は、国の会計制度が変更されないかぎり、大がかりなシステム変更の必要も生じず、メンテナンスの範囲でシステムを運用できていたのである。

 つまり、ITが普及する以前から存在している企業では、長らく、コア・コンピタンスを生む事業部門への投資と、IT部門への投資は別物と考えられてきた。ビジネスとITを分けて考える経営者が多いというのは、ここから来ていると思われる。

 その後、周知のようにIT革命が起こり、社内のITインフラは事業の強化に不可欠な基盤へと昇華し、ITのビジネス活用の範囲は大きく拡大されることとなる。しかしながら、多くのIT部門は、こうしたITのパラダイム・シフトについていくことができなかった。利潤と新しい価値の創出を担う部門に生まれ変わることができず、コスト部門の位置づけのまま、時代から取り残されていったのだ。

コア・コンピタンスとITの一体化を目指す

 ITが企業において果たす役割が変わったのであれば、IT部門も生まれ変わらなくてはならない。事業部門と乖離したコスト部門から、利潤と新しい価値を継続的に生み出すことのできる部門への転換。これを実現するためには、どうしたらよいか。この問いに対する筆者の解は1つである。

「IT部門は、全社横断型の戦略組織であるべきだ」

 IT部門が全社横断型の戦略組織となることで、企業の事業戦略とそれを実現するIT戦略、そして事業戦略の遂行および変更プロセスと、システムの構築および修正プロセスがシームレスにつながるようになる。

 もちろん、筆者がここであらためて主張するまでもなく、すでにこの考え方を実践し、成果を上げている企業も少なくない。しかしながら、IT部門を形式的に全社横断型の組織として位置づけさえすれば、直ちにビジネスとITが緊密に連携するわけではなく、そこに至るまでにはいくつかの施策が必要であるし、留意点も存在する。そこで以下、実際に成果を得る組織の実現に向けて、考慮すべきポイントを見ていくことにしたい。

事業とITが連携していない組織の問題点

 まずは、全社横断型の組織として、IT部門の“組み方”をしっかりと検討したい。ここでは、どうしたらITをコア・コンピタンスと一体化できるかを考えて、組織編成を見直し、適した人材を確保する方法や人材の配置決めを行うことになる。ただし、単純に、IT部門内に「営業部門担当」や「製造部門担当」といったような事業部門担当を置けばよいというものではないことに注意されたい。


図1:コア・コンピタンスとITの一体化が図られていない状態にある、事業部門とIT部門のワークフロー

 図1に、ITとコア・コンピタンスの一体化が図られていない状態にある、事業部門とIT部門のワークフローを示した。ここでは、システムの構築・運用・修正が、いわばバッチ処理型のフローとなっている。事業部門とIT部門がこのような関係では、プロジェクトの立ち上げに伴うシステム構築が長期化するうえ、フローの途中で、伝達される情報の劣化や経営者の意思決定から外れた“思惑”が入る可能性が生じ、部門間の緊密な連携はかなわない。規模の大小にかかわらず、企業内部には各事業部門のマネジャーの思惑は必ず存在する。ここで稟議的な部門間交渉などがあれば、経営者や事業部門のキーパーソンによる意思決定は、劣化した形で伝わってしまうのだ。読者の皆さんの中には、こうした経験を実際にされた方もきっと多いことだろう。

 また、これも往々にして見られるケースであるが、事業戦略の策定フェーズにおいてITを熟知する人材が参加していないために、ITの活用の部分が空論で戦略策定が進んでしまうことがある。その際には、戦略の骨子が固まった後に初めて、IT部門にシステム構築の指示が出されるため、必要とする性能・機能を備えるシステムを構築するのに要するコストと、事業部門が考える予算に大きな隔たりが生じてしまう。この乖離はその後、「予算の再申請」「機能の削減」「システム構築作業全体の見直し」などといった無駄なプロセス(時間)を生むことになるのは言うまでもない。

 企業が人件費や固定費を払い続けている以上、「時間=コスト」は絶対であり、無駄な時間の発生はそのまま収益構造の悪化へとつながっていく。この問題を改善しないかぎり、IT部門は全社横断型の戦略組織として、コア・コンピタンスに貢献することができないのだ。

コア・コンピタンスとITの一体化に成功した企業の特徴

 では、コア・コンピタンスとITの一体化に成功した企業は、上記の問題をどのように克服していったのか。筆者が日々、さまざまな企業を訪問してわかったのは、成功した企業では必ず、事業戦略策定にかかわるキーパーソンがIT部門にも所属しているか、あるいは事業部門のキーパーソンがITの本質を理解しているかのどちらか、あるいは両方であるということだ。

 筆者の知る、IT部門に所属しながら事業戦略の策定にもかかわるキーパーソンの1人は、ITを生業としているソリューション・プロバイダー顔負けの情報量を持ち、ITの本質を見抜く力を持っている。こうした人材が自社にいれば、組織図上、IT部門が総務部や経理部と併記されていたとしても、事業戦略に深くかかわるIT部門を実現することは可能なのである。

 この例は、人材面で恵まれた企業の成功パターンであるが、企業が永続的に成長を続けていくための基盤となるような組織編成を考えるならば、こうした成功パターンを、いわゆる“人付き”や従業員の自主的な努力をあてにするのではなく、体系的に実現できるような仕組みの確立が急務となってくるはずだ。

理想の組織編成とミッション

 では、企業が目指すべきIT部門の組織編成はどうなるか。図2にそれを示した。IT部門は全社的な経営戦略が策定される取締役会の直下に置かれ、戦略策定と各事業部門のプロジェクトに横断的にかかわることのできるポジションを確立する。このポジションにより、ITが事業部門の戦略策定の初期フェーズから組み込まれるようになり、企業のDNAやコア・コンピタンスを強く意識した活動ができるようになる。この編成は、社に“使われる”だけの部門から、社をリードする部門への転換の出発点となるものだ。

図2:企業が目指すべき、コア・コンピタンスとITが一体化した組織のワークフロー

 そして、企業は上記のようにIT部門を再定義し、適切な人材配置を行うのと同時に、各事業部門にも、企業のDNAや事業戦略の理解に加えて、ITの本質や活用の実際も深く知る人材を配置する必要がある。これらを行うことによって、戦略策定フェーズからビジネスとITがシームレスにつながり、シンプルかつスピーディーな組織運営が現実のものとなる、と筆者は考えている。

最大の課題──すぐれた人材の確保・育成

 IT部門が全社横断型の戦略組織として効果的に機能するようになるまでには、いくつかのハードルが存在する。最大の課題は、何と言ってもITの本質を理解した人材の確保であろう。組織体制は変更できたとしても、すぐれた人材の確保は一朝一夕にできるものではない。そもそも既存のIT部門にすら、ITの活用方法を深く知っている人材が少ない企業もあり、そうしたところで、各事業部門にITを浸透させるというのは非常に困難であると言わざるをえない。

 筆者は実のところ、企業内においてITの本質や活用の実際を熟知する人材が少なくなっていることが、IT部門の存在価値を減衰させた大きな要因であると見ている。ここで言うITの活用とは、業務で出来合いのパッケージ・ソフトウェアやRAD(Rapid Application Development)ツールなどを使う過程で自然と身につくといったレベルの話ではない。システムをスクラッチで開発できるスキルとまではいかなくても、システムやアプリケーション、ネットワークなどITインフラの各技術分野に関する知識を持ち、それらがビジネスにどのようにつながっていくのかを理解しているレベルを指している。

 かつては、今よりも企業内に優秀なエンジニアが多数在籍していたように思う。汎用機が企業コンピューティングの主役だった時代、あらゆるシステム/アプリケーションは自社のエンジニアたちによって構築・運用され、そこで培われたスキルとノウハウがIT部門内で受け継がれていったからだ。その後、企業でのIT活用が一般化すると、IT部門には、コスト削減とシステム構築の迅速化の両立が要求されるようになり、パッケージ・ソフトやワンストップ・ソリューションの導入が進むこととなる。この流れの中で、経営者や事業部門の要求にこたえた結果、皮肉にもIT部門スタッフは、ITの本質や活用について深く学ぶ機会を失っていった。ベンダーやSIerから提供される、お膳立てされたパッケージ・ソフトやソリューションからは、ITの本質を学べるはずがないのは自明である。

 もちろんここでは、システムやアプリケーションを構築する際に、開発効率の高いパッケージ・ソフトやワンストップ・ソリューション、RADツールなどを活用することが悪いと言っているのではない。これらは、今後も適所適材で活用するべきである。しかしながら、例えば、システムの自社構築のプロセスをまったく知らないようなレベルでは、ビジネスの変化に即応可能なシステムの構築・運用はおぼつかないと筆者は考えている。IT部門にITの本質と活用の実際を知る人材を配置すること、そして、そのようなすぐれた人材を継続的に確保するための取り組みについて、企業は真剣に検討する段階にきているのである。

人材育成でとるべき施策

 ここでは、IT部門がITの本質と活用の実際に精通した人材を得て、適切に育成していけるようにするための施策と、事業部門のキーパーソンに、企業のDNAに沿った事業戦略とITの関係を正しく理解させるようにするための施策について考えてみたい。

 IT部門の今後の人材育成の基本方針としては、日々業務で使うパッケージ・ソフトやRADツールをマスターさせることがメインという教育から、各種技術の基本的知識から学ぶ体系的な教育へとシフトする必要がある。

 一方、事業部門では、現状、マネジメントや財務に関する教育が中心の管理職研修プログラムに、ITの教育カリキュラムを入れることが第一歩となろう。各部門のキーパーソンが各種技術のアーキテクチャまでを詳しく知っている必要はないが、プロジェクトの推進に際してITの活用に関する判断や起案ができるレベルの知識とノウハウを身につけることは非常に重要である。

 実際、事業部門のマネジャーの中には、「今やビジネスにITは不可欠だ」などと言うわりに、「IT部門の業務はコストと時間が多くかかりすぎている」といった認識を持つ人が少なくない。コストと時間がかかる理由は、IT部門と事業部門の連携がうまくいっていないことにほかならない。事業部門のキーパーソンはまず、互いの部門の役割を理解することから始めるべきである。

「オープンソース教育」を人材育成に生かす

 前節で挙げた、今後のIT部門を担う人材の育成に向けた施策の一例として、ここで現在、筆者が取り組んでいる「オープンソース・ソフトウェア(以下、OSS)教育」を紹介したい。

 汎用機の時代のように、IT部門のスタッフに対してシステムやアプリケーション、ネットワークの構造といったITの本質を学ぶ機会を提供する必要があると先に述べた。筆者は、社内でOSS教育を推進していくことが、その適切な手段になりえると考えている。

 OSSによるシステムやアプリケーションの構築にあたっては、それらを構成する各プログラムの動作やネットワーク・インフラとの関係などを理解している必要がある。その理解を主目的とするOSSの教育カリキュラムは、ITの本質を学ぶのに格好の手段であると言える。しかも、OSSの世界では世界レベルで日々、活発な情報交流がなされている。ここでは、自社のIT部門スタッフが社外のエンジニアやプログラマーおよび開発コミュニティと交流を行ったり、知識やノウハウを学びながら見識を深めたりすることがたやすいのだ。

 ただし、国内におけるOSSの教育サービスは現在、過渡期であり、すべてのOSS教育サービスが上質な教育カリキュラムを提供しているとは言い難い。筆者の事業で目指しているのは、座学やマンツーマン的なカリキュラムではなく、よりOSSのノウハウ・トランスファーを実現できるPBL(Project Based Learning)の提供である。PBLとは、数名から成るチーム単位で知識と実践を教育する手法のことである。

 今年9月には、IT系人材派遣大手のテンプスタッフ・テクノロジーと筆者の所属するワイズノットの協業によるOSS人材育成プログラムがスタートする。OSS開発に興味を持ち、導入を考えている企業に最適な人材育成プログラムを提供すべく、筆者は今、このプログラムの開設準備に取り組んでいるところである。

エンジニアの喜びと誇りがもたらすもの

 以上、IT部門が今後、ビジネスの変化に即応し、企業の市場競争力に大きく貢献できるようになるための方策について述べてきた。

 さて、読者の皆さんは、OSSを活用した新興企業で活躍するエンジニアたちに接したことがおありだろうか。筆者の経験では、そうした企業のエンジニアは皆(少し寝不足のような方もいたが)、とても生き生きとしたよい表情をしていた。ITの本質や神髄に触れるような経験を重ねつつ、企業のコア・コンピタンスに携わることのできる喜びと誇りが、彼らの活力の源となっているように思える。この喜びと誇りがあるかぎり、彼らは、ITへの探求をさらに続けたいとみずから願い、優秀なエンジニアとして成長を続けるはずである。

 面白く、しかも誇りを持ってできる仕事でなければ、そこに優秀な人材が集まるはずもなく、人材が集まらなければ、その産業は衰退の道をたどることになる。このことは何もIT産業に限った話ではないが、現在、97%を輸入に頼るわが国のソフトウェア産業は、パッケージ・ソフトに代表される量産化、均一化の流れの中で、エンジニアが仕事を楽しいと感じる機会が少なくなっているように思う。本稿で重ねて強調してきた、企業のDNAやコア・コンピタンス、ITの本質への深い理解は、各社のIT部門やビジネスの再生、強化にとどまらず、日本のIT産業全体の活性化にもつながっていくはずだ。筆者はそれを切に願っている。





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